冷凍魚の鮮度判定を細菌学的に検討してゆく緒として、解凍後の細菌の動向を検した結果、次のことが考えられる。 1. 低温度下での生残菌は解凍後鮮度の低下に伴って、純培養と同様の Pattern を示して増殖する。その増加は保存温度の高いほど速い。また再度常温にもどした場合の魚肉の腐敗は、最初の菌の汚染 (細菌数) とは無関係に、同一温度下では常に同じ速度で腐敗に至ると思われる。 2. 生菌数は、初期の段階では VB-N の増加とある程度関連をもちつつ増加してゆくものと思われる。生菌数における初期腐敗推定点は、 VB-N の同点より常に先行する。細菌の生理・代謝過程、菌叢交替現象などより、前報における VB-N の初期腐敗推定点は、 すでに腐敗の進行途上にあるとも推察できるので、今後なおこのことに関して慎重に検討をすすめたい。 3. 魚肉の生菌数と大腸菌群数は相関関係を示す。 冷凍魚の衛生指標菌として、大腸菌群数を迅速に算定することはきわめて意味あることと考える。 4. 氷衣 (グレーズ) 中の生菌数と魚体 (表皮) の生菌数・大腸菌群数もそれぞれ相関関係を示す。氷衣中のこれら細菌数を測定する意義は、魚の凍結・陸揚げ・輸送などの二次的汚染を示唆するものと思われる。