アピオスにはイソフラボンが含まれることから,イソフラボンの新たな摂取源となることが期待される.しかしながら,アピオスの利用法については十分に検討されていない.そこで,アピオスを有効利用することを目的として,身近な食品であるパンへの加工を試みることとした.また調理加工に伴う,アピオスパンのイソフラボン組成とその変化,さらには,異なる製パン法がアピオスのイソフラボン組成に及ぼす影響についても調査した.
アピオスを添加したアピオスパンとアピオス無添加のパンと比較したところ,香りおよび甘味において有意差が認められた.また,アピオスに含まれるイソフラボンは,パンへ利用することによって配糖体からアグリコンへ変換することが明らかとなり,その変換には強力粉由来の β -グルコシダーゼが関与していると推察された.さらに,ストレート法と中種法とで,異なる製パン法によるアグリコンへの変換の程度を比較したところ,中種法で顕著にアグリコンが増加することが明らかとなった.中種の調製では,冷蔵24時間および常温2時間を比較したところ,冷蔵24時間で配糖体からアグリコンへの変換が大きかった.
以上のことより,アピオスをパンの材料として配合することで,アピオスのイソフラボン配糖体からアグリコンへの変換がみられたことから,アグリコンとして摂取を期待したときには,有効な利用法のひとつであることが示唆された.