本研究では,日本で市販されているイチゴジャムを試料とし,口中での風味の強さと持続をTI法による官能評価で数値化し,あわせて理化学分析を行い,以下の結果を得た.
(1)試料の糖度は43.6∼66.2と広範囲で,主な糖の組成もさまざまであった.また,試料に含まれる有機酸はクエン酸が多く,次いでリンゴ酸であったが,その構成比はさまざまであった.
(2)各試料の平均TI曲線を見ると,高糖度,中糖度,低糖度といった糖度別による分類は,試料のおおよその甘味の強さに一致するものの,それだけでは説明できないことが確認された.
(3) TIパラメータは,風味を構成する官能特性におい.て,Imax,AUCおよびTtot間の相関係数が高く,これらのパラメータが各官能特性の強さを示していると考えられた.
(4)官能評価データに主成分分析を適用したところ,第1主成分および第2主成分は,それぞれ,酸味および甘味に関するものと解釈できた.また,第3主成分として,TIパラメータのうち,摂食中の時間に関係するパラメータが寄与する主成分も抽出され,風味の詳細なプロファイリングのためには,時間の観点からの評価の必要性が示唆された.