甘藷のデンプン粒内の顆粒結合性デンプン合成酵素の可溶化法について検討し,次の諸点を明らかにした。 (1) 甘藷の生デンプン粒に認められるデンプン合成活性は,ADP-[14C]グルコースの方がUDP-[14C]グルコースよりも高いとり込み活性を示した。 (2) デンプン粒へのとり込み活性は,尿素濃度の変化と共に増加し,ADP-[14C]グルコースからのとり込み活性は,7M尿素処理で約4.5倍促進されたが,UDP-[14C]グルコースの場合は5M尿素にとり込みの最大活性を示した。 (3) 生デンプン粒は尿素分画により,デンプン内層部(尿素可溶性区分)と外層部(尿素不溶性区分)に2分される。この方法を用いて生デンプンにとり込まれた放射能分布についてみると,ADP-[14C]グルコースからのとり込みはデンプンの外層部に主として認められ,UDP-[14C]グルコースを用いた場合は,放射能はデンプン内層部に約1/3,外層部に約2/3とり込まれていた。この結果は,ADPGおよびUDPGを基質とするとり込み活性が局在していることを示唆している。 (4) デンプン合成活性のある尿素不溶性のデンプン外層部は,プルラナーゼ法で可溶化される。これを遠心分画した沈殿区分は,ADP-[14C]グルコースあるいはUDP-[14C]グルコースからのとり込活性を有していたが,上清区分におけるとり込み活性はUDP-[14C]グルコースに特異性があり,ADP-[14C]グルコースのとり込みは認められなかった。