大豆の酸沈殿分離タンパク質を用い,その乳化力(EC)および乳化安定性(ES)におよぼすアシル化の効果を検討し次の結果を得た。無処理タンパク質のECおよびESをpHの函数として見た場合,等電点(pH 4.5)付近を底とする谷形の曲線をえがくが,アセチル化タンパク質はpH 4.5付近の乳化特性が向上し,酸性側からアルカリ性側にかけてゆるやかに上昇する曲線を示した。サクシニル化タンパク質のESは無処理のものと同様の谷形を示すが,その最低値のpHは約1ポイント酸性側に移動し,中性付近ではとくに高いESを示した。pH 7におけるESはアシル化度10~70%の範囲で無処理のものより一度減少し,70%以上になって増加した。85%以上のサクシニル化は無処理の2.5倍のESを示して注目された。pH 4.5におけるESはアセチル化度と共に増加した。pH 3.5におけるESは30~70%のサクシニル化で無処理の10%以下から40%まで増加し,90%以上のサクシニル化で再び付近の値まで減少した。pH 4.5における95%アセチル化タンパク質は,無処理タンパク質と同様約5%しか水に溶けないのにもかかわらず,そのEC, ESは,80%以上の水溶性を示すpH 7のそれらと同等の値を示し,タンパク質の乳化特性は必ずしも水溶性と平行関係にないことを確認した。