光による高効率潜像形成機構に照らして,40 nmのハロゲン化銀(AgX)微粒子による暗黒物質の検出過程を分析した. ニュートリノと物質の衝突で発生する最小電離粒子により上記粒子中に生成する電子正孔対はわずか〜6個であるのに対して,暗黒物質によって生成すると期待される反跳原子核は〜10 fsの短時間で〜1000個もの電子正孔対を発生させる.後者では高効率潜像形成は,その必要条件であるクーロン力が高密度の電子と正孔で遮蔽され,格子欠陥や増感中心は圧倒的な数の電子と正孔を処理できず,再結合抑制に有効なイオン過程は電子過程に圧倒されるので機能し難い.しかしながら多数の電子の生成により高効率の潜像形成とそれに必須の化学増感は暗黒物質の検出には必要ないものと分析した.最大の問題は高濃度の電子正孔対の生成で再結合が著しく速くなる上に,高エネルギーの電子と正孔がもたらす外部光電効果とAuger効果により正孔を粒子に留めたまま多くの電子が粒子の外に飛び出し,正孔に比して電子が少なくなることである.検出感度の向上には,再結合と再ハロゲン化の強い抑制を主眼とし,潜像退行と経時かぶりにも留意した総合的な設計が必要である.