アインシュタインは, 観察結果を並べてもある概念を作り出すことはできない, 事実とは直接つながらない公理に思考をジャンプさせることが必要と述べた。事実アインシュタインはその手法で独創的な特殊相対性理論を作り上げた。次に脳に対する理解の変遷を振り返った。ガルの登場前には, 精神機能は脳室に存在するとされた。ガルは各々の精神機能は明瞭な境を持つそれぞれの脳回にあると述べた。ガルによれば, 局在する精神機能は従来の記憶力判断力などではなく, たとえば音楽能力などであった。さらに脳損傷例を自身の主張の根拠とした。骨相学の開祖としてだけ有名なガルではあるが, 驚くべき思考のジャンプをなしたのである。知覚とは脳内の処理であり, そうした脳内の処理を通して知覚システムが世界の内的表象を構成する。形成された像が蓄えられている表象との照合を経て認識は完了する。この表象説についての疑義を, 文字間隔が錯読に及ぼす影響, 不注意, 純粋失読, 色の処理などの研究を取り上げて論じた。最後に, 表象説に代わる考え方として, 感覚運動過程を重視する考え方, 脳の構造に結びついた個別の見方で毎回新たに刺激を処理する考え方を述べた。