近年,食品を構成する親水性成分の多くが非晶質(アモルファス)にあり,温度や水分含量の変化によってガラス-ラバー転移(ガラス転移)すること,ガラス転移によって食品の加工性,保存性,食感が大きく変化することが明らかとなり,食品のガラス転移特性を理解することの重要性が広く認識されるようになった.食品のガラス転移特性はガラス転移温度( T g)によって特徴付けられる.本稿では食品成分ならびに食品の T gに関する筆者らの研究成果を中心に紹介する.凍結乾燥マンゴーピューレにおける T gの水分含量依存性を示差走査熱量(DSC)測定によって調べ,それはマルトデキストリンの添加によって制御可能なことを明らかにした.クッキーの T gはDSC測定によって決定することはできなかったが,昇温レオロジー測定によって力学的 T gを決定することができた.クッキーの力学的 T gは配合する糖質によって制御可能なことを示した.