本研究の目的は,Sprangerの価値類型論に基づき6種の価値への志向性を測定する尺度である「価値志向性尺度」の尺度項目間にみられる順序関係を明らかにし,価値志向性というパーソナリティ特性の構造や成り立ちを解明することである。本研究ではそのための分析手法を新たに開発し「順序関係分析」と名付けた。順序関係分析では,尺度に含まれる2項目ごとに順序関係の有無が判定される。2項目間の相関係数および平均値の差が共に基準以上であれば「順序関係」,相関係数が基準以上で平均値の差が基準未満であれば「等価関係」と判定される。さらにこれらの順序関係および等価関係が樹状図で示される。この分析を,大学生320名(男子156名・女子164名/平均年齢20.0歳)の価値志向性尺度への回答データ(5件法)に適用し,6種の価値志向性(理論・経済・審美・宗教・社会・権力)を測定する6尺度それぞれについて樹状図を作成した結果,Sprangerの理論ともよく対応する特徴的な順序関係が各尺度において見出された。また,今後尺度の妥当性をより高めるべく改良していくための示唆が得られた。