佐賀大学における共同研究の実施状況を明らかにするために,2004~2013年度の共同研究の契約情報を整理・分析し,共同研究の相手先の地理的分布とその変化を調査した.その結果,以下のことが明らかとなった. ①共同研究の相手先の割合は,大企業が約52%,中小企業が約34%,企業以外が約14%と大企業の割合が最も大きく,大企業や中小企業と共同研究が多く行われていること. ②大企業を相手先とする共同研究は,関東地方,東海地方,近畿地方,九州地方の順に多く,これらの4地域で全体の約96%を占めていること. ③大企業との共同研究件数は,関東地方ではやや増加傾向にあるが,九州地方では減少傾向にあること. ④中小企業を相手先とする共同研究では,佐賀県と九州地方,関東地方,近畿地方が多く,これらの1県3地方で全体の約92%を占めていること. ⑤佐賀県内の中小企業を相手先とする共同研究は,2010年度にかけて減少しその後は回復傾向にあるとみることもできるが,調査期間の前半5年と後半5年を比較すると減少していること. ⑥企業以外を相手先とする共同研究は,佐賀県と関東地方に位置する機関と多く行われていること. 地域イノベーションの創出の促進を考えると,大学と大学所在地県の企業との共同研究が減少傾向にあることは大きな問題と考えられ,今後,他地域の状況を明らかにして比較を行い,問題点を明らかにすると共にその課題を検討していく必要がある.