近年,落花生の Aspergillus parasiticus などによるアフラトキシン-B1,B2,G1,G2汚染の増加が報告されている.我々は,カラシ種子等に含まれる抗菌成分であるアリルイソチオシアネート(AIT)を適用することにより,落花生の種実に常在する菌類とアフラトキシン(AF)産生菌の増殖が抑制されるかを試みた.温度・湿度を調節した密封容器内に, A. parasiticus を接種した中国産および国産落花生を収納し,AITを主成分とするカラシ抽出製剤(ワサオーロ)を適用して,AIT蒸気暴露による影響を調べた.落花生の入った容器内のAIT濃度は,3時間目に最高値の44.8ng/mLに達し,その後に減少して9週目には5.6ng/mLとなった.AITを適用した落花生の種実常在菌および接種菌に関しては,試験期間中に種実常在菌の菌数は減少したが,接種菌は初期の菌数のまま生残した.また,AF濃度について併せて測定したところ,接種したAF産生菌数とAF蓄積量との相関が認められ,AITによって常在菌類および接種菌とAF蓄積が抑制されることが示唆された.