人類学・先史考古学の教育普及において博物館展示は特に有効だが,展示解説には常にさまざまな制約があり,さらに興味を抱いた来館者に対して効果的に展示を補足する工夫が求められる。既存のウェブサービスを活用すれば,大きなコストやスキルを必要とせずに,博物館展示を補足する解説システムを構築できる。本稿では,東京大学総合研究博物館の2009–2013年の人類学・先史考古学を扱った常設展示「キュラトリアル・グラフィティ―学術標本の表現」において実施した,Twitterやブログを利用した展示解説の取り組みについて報告する。2011年9月から2013年5月までの21ヶ月間に,ふたつのシステムを比較し,利用者にアンケートをとって解析した。その結果,以下の3点が明らかになった。(1)来館者の所持する携帯電話端末から閲覧できる展示解説は,多数の来館者から利用を希望されていたものの,モバイル通信ネットワーク経由で接続することを前提としたシステムでは,提供する情報量を絞り,軽量性を重視することも重要である。(2)2011–2013年時点の状況として,10代20代の若い世代の利用率が高く(それぞれ17%,24%)60代以降の利用率が低かった(7%以下)。(3)来館者のニーズは多様であり,どのような範囲のニーズに応えることを目指しているのかを明確にしていく必要がある。