加齢につれ,人は感情状態を調整するように動機づけられ,その結果感情状態が良好になるとされる。本研究では,改訂版感情調整尺度を用い,成人期にわたって感情調整が発達するか検証することを目的とした。青年期を対象にした調査1 (153名)と壮年期から高齢期までを対象を対象にした調査2 (518名)の結果,すべての年齢群および青年期以外の各年齢群で改訂版尺度の1因子構造が確認された。青年期では適合度と内的整合性は低かった。また,改訂版尺度は,楽観性,外向性,適応的コーピング,肯定的感情,認知的再評価と正の相関を示した一方,神経症傾向,不適応的コーピング,否定的感情,感情表出抑制との関連は示されず,構成概念関連妥当性が確認された。年齢差を検討した結果,感情調整は高齢期で中年期以前よりも高く,仮説が支持された。今後,感情調整の発達が感情状態を良好にするか検討するため,縦断研究の必要性を議論した。