タイ産, ベトナム産および日本産の魚醤油66種を用いてそれらの化学組成を比較した。その結果, 魚醤油の性状が非常に多様であることを確認した。食塩濃度は14-28%であり, pHは5-8, 全窒素量1-6g/100mlと従来の報告と比べ, これらの値の範囲が広かった。また, 全窒素量が高い魚醤油はペプチド態窒素量が多かった。生体への機能が興味深いペプチドの含量は全窒素に対し全魚醤油の平均は32%であった。国別では日本産よりもタイ産, ベトナム産が高く, 亜熱帯から熱帯気候に位置するタイやベトナムは日本より高温で熟成させるため, プロテアーゼによる魚肉タンパク質の分解が高かったと考えられた。総遊離アミノ酸と代表的な旨味成分であるグルタミン酸との関係では総遊離アミノ酸量が多くなるに従ってグルタミン酸量は高い値を示し, その割合は平均で12%であった。一方, グルタミン酸の割合が20-30%と魚肉タンパク質の同組成値よりも高い値を示すものもあり, これらはグルタミン酸を添加している可能性が考えられた。