強力粉に湿熱処理を施し, タンパク質の消化性, 粘性特性を測定した。また, 湿熱処理小麦粉から澱粉を分離して澱粉糊液の粘性特性について検討し, 食感改良素材としての基礎的データを収集した。SEM観察では, 湿熱処理により粒形が扁平になり, 中央部分にくぼみが生じており, 内部構造の変化が示唆された。湿熱処理によるタンパク質含量, 水分含量の変化はなかったが, プロナーゼによるタンパク質の消化率および塩可溶性タンパク質量は, 未処理に比べて著しく低下していた。湿熱処理小麦粉およびそこから分離した澱粉のRVA曲線は, 粘度立ち上がり温度が上昇し, 最大ピークを示す曲線に変化していた。平衡粘度から見かけの活性化エネルギーを算出し, 小麦粉および澱粉ペーストの温度安定性を検討したところ, 小麦粉ペーストは有意な差はみられなかったが, 澱粉ペーストは湿熱処理10.5kJ/mol, 未処理25.9kJ/molであり熱安定性が著しく向上していた。