本研究の目的は,小学校で使用されているすべての教科書を対象に,児童が文字として目にする樹種名(木本植物の名前)と樹種名出現頻度(樹種名が登場する回数)を明らかにすることである。教科書に掲載されている樹種名とその出現頻度を把握するために,全国で使用されている文部科学省検定教科書の全学年全教科を対象に,樹種名の抽出と集計を行った。その結果,どの教科に関してもサクラ,リンゴ,カキ等といった身近な樹種や果樹が多いことが明らかとなった。社会科の5年生で唯一森林に関する単元があるが,そこで扱われていたスギやヒノキの出現頻度は高くなかった。樹種名数が多かった上位4教科は国語,生活科,社会科,理科であり,樹種名の出現頻度が高かった教科は国語,算数,理科,社会科であった。また,出版社別の樹種名数については,出版社ごとに違いが見られた。さらに,全体的な傾向として第4学年の教科書に樹種名の出現頻度が高い傾向があった。教科書に載っている樹種名は国語,生活科,社会科,理科を中心に私たちの生活の中で目にすることができるものを中心に取り入れられており,生活と連結して考えることを目的としているのだろう。