本研究では水泳用プールの底や側面に映像を投影することで,バーチャルリアリティ(VR)環境を構築し水泳体験を向上することを目指した.この水中没入型VR環境には,水泳トレーニングの支援効果や,浮遊感を提供する新しいVR環境として効果が期待される.本研究では,水中にVR環境を実現する際の技術的課題を明確化し,その解決策を提案した.没入型VR環境を構成するためには,ユーザーの目の3次元位置の計測と,その位置情報に基づいた適切な映像の提供が必要である.しかし,一般的にVR環境の構築に使用される赤外線を用いた位置計測装置は,赤外線が大幅に吸収される水中では使用できない.また,可視光を使用した場合も,映像が周囲に表示された環境では安定した計測が難しいことが確認された.本研究では,円偏光による遮光を利用して,投影された映像をカメラからのみ不可視にすることで位置計測を実現した.また,水中を撮影した際に発生する映像の歪みや,他スクリーンからの映像の映り込みが起こす没入感の低下を解決する方法についても検証した.