比喩文の理解課題を作成し, 軽度から中等度のアルツハイマー病者 20 名 (AD 群) に実施した。 課題は, なじみの低い直喩文30 題のそれぞれについて, その意味にもっともあう文を 4 つの選択肢から選ぶよう求めるものである (藤本ら 2016) 。その得点とトークンテスト (TT) の得点について, 健常高齢者 20 名 (高齢群) および失語症者 15 名 (失語群) と比較した。さらに, AD 群の比喩理解課題の得点と Mini-Mental State Examination (MMSE) , Frontal Assessment Battery (FAB) の得点との相関関係を分析した。その結果, AD群の比喩理解課題得点は高齢群より有意に低かったが失語群とは同等で, TT 得点は高齢群より有意に低く失語群よりは有意に高かった。AD 群の比喩理解課題の得点は, MMSE の総点と有意な相関関係を示し, 下位項目・領域別では MMSE の「注意と計算」領域と「書字」項目得点, FAB の「類似性」「語の流暢性」項目得点と関連した。アルツハイマー病の比喩理解障害の性質は失語とは異なり, 遂行機能および意味記憶の障害が関わる可能性が示唆された。