目的: 本研究は,某食品製造業に導入された作業分析をもとに考案した職場体操が作業員の身体機能に与える影響を検証することを目的とした. 対象: 調査対象はF市内の某食品製造業が有する工場に勤務する作業員(622名)とした. 方法: 最初に作業負荷による身体負担を把握するために作業分析を実施した.次いで,体操導入前に運動機能テストと質問紙調査を実施した.運動機能テストは,2ステップテストならびに30秒椅子立ち上がりテストを選定・実施した.体操導入3ヶ月後に再度運動機能テストと質問紙調査を実施した. 結果: 運動機能テストでは,体操導入前後の30秒椅子立ち上がりテスト性別平均値についてt検定を実施した結果,導入前の男性で20.9±4.8回,導入後は27.9±5.1回,導入前の女性で19.4±3.1回,導入後は23.7±2.7回と,男女ともに有意な改善が認められた( p <0.01).2ステップテストの性別平均値では介入前後に有意な差は認められなかった.体操導入前後の質問紙調査についてχ二乗検定で比較した結果,「1ヶ月以内の躓きやふらつき」について有意な差が認められた.また,身体各部位の疲労感についてMann-Whitneyの U 検定で比較した結果,背部,右足・足首,左足・足首に有意な疲労感の減少が認められた( p <0.05). 考察と結論: 職場体操の導入によって運動機能が向上したことで,躓きやふらつきの減少や,背部,右足・足首,左足・足首の疲労感が減少したとの評価が増えたと考えられる.今回,作業分析をもとに考案した職場体操には従業員の運動機能の向上に関して一定の効果があったことが示唆された.