我々は2016年9月に「金融リテラシーと金融トラブルに関する調査」を実施した。この調査では、2,700人の回答者に対して、金融トラブルの経験、金融リテラシーならびに金融経済教育の経験について幅広く質問した。本調査では、金融リテラシーの観点から、金融トラブルを経験した人々の特徴を分析した。金融リテラシーが金融トラブルの経験とどのように関連しているかを定量的に分析した論文はほとんどなく、われわれの知る限り、本論文は先駆的である。我々の結果によれば、金融リテラシーの高い人々は金融トラブルを経験しにくいという明確な傾向は見いだせなかった。これは、ある種の金融トラブルは、金融リテラシーの高い人々のほうが経験しやすいためである。逆に、金融リテラシーの低い人が遭遇しやすい金融トラブルがあることも明らかになった。また、金融トラブルを経験していない人々の中には、金融リテラシーが高くて防げたからではなく、単にさまざまな金融サービスを使用していないだけの人も多い。