本研究では,学校評価は管理職が行うものと考えていた校長の意識が,学校全体で実施しようという意識へと変容する過程,および意識変容を促進する専門家の支援のあり方について検討した。本研究の実践では,協働的で自律的な実践活動を支えるエンパワーメント評価アプローチのツールであるGetting To OutcomesTM (GTOTM)1に基づき,日本の学校評価用に開発された学校評価GTOの導入を試みた。複線径路等至性モデルを用いた分析の結果,学校評価GTOを実施することで,(a)目標設定,実践計画,評価実施までを事前に準備することができ,学校評価の改善が可能であるという気づき,(b)学校全体での取り組みを試みる中で校長自身の学校運営に対する統制感の獲得といった意識変容の過程を経て,学校全体での実施という意識に至ることが示された。さらに校長の意識変容を促すために,校長の問題意識がない場合には導入の必要性を検討し,年度途中での運用上の修正が可能な提案,校長自身が学校教育計画や学校評価報告書に統制感を持つための支援,全校実施をイメージできるような実践ツールの提供,学校の特色に応じて実効性のあるツールへと改良するといった,専門家による支援の重要性が示された。