腸管毒素原性大腸菌(ETEC)は,発展途上国において一般的な病原体として知られており,汚染した野菜や水を介して食中毒を引き起こす.また,ETECは,先進国でも食中毒を引き起こすが,その原因食品はしばしば不明である.そこで,食中毒統計を基に日本で発生したETEC食中毒事例を分析した.その結果,野菜および井戸水が原因食品の50%および22.2%を占めた.これら主な原因食品は発展途上国の場合と同様であった.また,ETECの血清群も分析され,血清群O6,O25,O27,O148,O153,O159およびO169が主要7血清群であった.ETECの代表的な血清群O148による食中毒発生事例について,その食品での検査法を中心に詳細に検討した結果,二段階増菌法および耐熱性エンテロトキシン遺伝子を対象としたリアルタイムPCR法によって本菌が効率的にカットネギから検出された.本研究では,日本でのETEC食中毒の原因食品および主要O血清群が明らかになり,ETECの国内環境での生存が示唆された.また,食中毒事例での原因食品究明において効果的な検出法が示された.