開発・保全プロジェクトの経験から得られた地域コミュニティが救済されるための紛争解決制度の要件を,REDD+プロジェクトの紛争解決制度が満たしているかにつき10事例のプロジェクト設計書の内容から分析した。その要件は,(1)紛争解決制度の設計や運営に地域コミュニティが関与すること,(2)問題が深刻化した場合に斡旋・調停する者が地域コミュニティから信頼され,その選定に際し地域コミュニティの意見が反映されることの2点である。分析の結果,2要件とも満たすプロジェクトはなかった。要件(1)を満たす場合は,地域コミュニティの既存の意思決定組織が制度に関与する事例が多く,さらにプロジェクトの実施主体でもある事例が多かった。加えて要件(2)の後半部分である斡旋人・調停人選定時の地域コミュニティの意見反映が満たされている事例も多かった。逆に要件(1)を満たさない場合は,地域コミュニティはプロジェクトの受け手となっており,プロジェクト実施主体が民間企業で構成されている事例が多く,その場合は,要件(2)に関して斡旋人・調停人の選定での意見反映に関する詳細が公開されていない事例が多いことが明らかとなった。