最近の食生活では冷凍食品は不可欠な存在になっている.国内で生産される冷凍食品の大部分は調理食品であるが,農産物や水産物,畜産物も冷凍食品として役立っている.しかしながら,大部分の野菜では90%以上が水分であるため,冷凍処理過程で生成した氷結晶が成長して細胞を損傷し,解凍時に大量のドリップを生成して野菜の品質を低下させる.そのため,野菜の種類によって冷凍に不適切なものも多く認められる.野菜冷凍時の細胞内氷結晶成長が減少すれば,解凍時のドリップ量低下が可能である.本研究では,野菜の冷凍速度の違いが細胞内氷結晶状態にどのように影響を与え,解凍時のドリップ量にどれくらい影響するかを,生とブランチングした野菜について調べた.冷凍用野菜としてダイコン,ジャガイモ,ブロッコリー,カボチャを用い,冷凍速度の異なる3種の冷凍方法を行った.ドリップ率を測定するとともに,細胞内氷結晶の成長と凝集状態をクライオSEMによって観察した.生とブランチング野菜のどちらについても冷凍速度が遅くなるほどドリップ率は増加する傾向を示し,細胞内氷結晶サイズは拡大した.また,ブランチングによってデンプンを含むジャガイモのガラス化現象による微細な細胞内氷結晶が観察された.生野菜冷凍と比べると,ブランチングした野菜冷凍時の細胞内氷結晶の成長は減少し,カボチャ以外では解凍後のドリップ率低下傾向が示唆された.