高次脳機能障害のリハビリテーション (以下, リハ) の本質は, その人にとって必要な生活上のゴールを達成し, その人にとって価値のある活動への参加を支援することである。標準的な検査の結果が〝底辺〟レベルや, 〝天井〟レベルの患者であっても, 適切なリハ・プログラムの恩恵を受けることにより, より自立した生活が可能となり, 生活の質を向上させることができる。本稿では, 記憶障害を含む高次脳機能障害を抱えて暮らす人の家族2 組について, 家族の話に〝耳を傾ける〟ことによって生活の中で対応を要する具体的な課題を明らかにし, 長期にわたるリハの治療戦略に生かす取り組みについて解説する。家族は, 約 20 年にわたる高次脳機能障害の人との暮らしを振り返って, 「何年たっても闘いは終わらない」現実と, 「検査成績ではなく, 生活の中の障害に目を向けてほしい」という医療関係者に向けた要望を語った。