食品流通において,食品の定温保持は極めて重要である.植物油を芯物質とした可食性蓄熱マイクロカプセルを調製し,定温保持に対する性能を評価した.ココナッツ油とゼラチン,アラビアガムからなる複合コアセルベートを調製し,蓄熱マイクロカプセルとして,性状および蓄熱能を評価した.マイクロカプセル化により,11℃前後に油脂の凝固点が観測され,バルクの油脂よりも高い凝固点を示した.また,67%以下の含油率では,マクロカプセルからの明確な油脂の流出は観測されず,付着性の低い粉体(オレオゲル)が得られた.これらの蓄熱性能を評価するために,蓄熱マイクロカプセル中に疑似食品片を入れ,その温度変化を測定したところ,-7.2~39℃の範囲での空気の温度変化に対して,疑似食品片のそれは3.6~29℃の範囲に収まった.このことから,食用油を芯物質として用いることによる,可食性蓄熱マイクロカプセルの開発の可能性が示唆された.