米飯における黄色ブドウ球菌の生育及びエンテロトキシンA (SEA) 産生に対するグリシンの影響を明らかにすることを目的とし, 本研究を行った. 飯重量の0 ~ 5 %のグリシンを添加した米飯に黄色ブドウ球菌SEA産生株11株を初発菌数106 CFU/gとなるようにそれぞれ植菌し, これらを37℃で保存後, 菌数とSEA量を測定した. 最大SEA量は0.5%グリシン添加飯では 2.1-40.8 ng/g, 1 %グリシン添加飯では 1.9-53.9 ng/g, 2 %グリシン添加飯では 0.9-35.0 ng/g, 5 %グリシン添加飯では0 (検出限界以下) -3.7 ng/g であった. 米飯の保存初期段階では, ほとんどの菌株において2 %及び5 %グリシン添加飯ではコントロールに比べ, SEA量が少なく, 増殖初期ではSEA産生が抑制されたことが示された. 黄色ブドウ球菌に汚染された米飯では, グリシン添加の有無に関わらず, 人が官能的に菌の増殖を識別する前に食中毒を引き起こすのに十分なSEA量に達する可能性があった.