積雪グライドにより樹林化が阻害された,最大積雪深2 mまでの急傾斜地において木製杭によって雪崩防止林の造成が可能であるか,さまざまな植栽密度のスギ人工林で検討した。調査は,このような立地条件で木製杭を斜面傾斜角35°および40°に対して,それぞれ450および620 基/ha設置すると同時にスギを植栽して10年程度が経過した5カ所の林分(植栽密度1,020~2,500 本/ha)を対象に行った。そして,木製杭の腐朽・損壊状況から求めた残存率と,スギ植栽木のうち雪上直立木(樹高が最大積雪深の2倍以上で直立状態のもの)となった本数密度を経時的に評価した。その結果,木製杭の残存率は,9年経過で約8割に,12年経過で約4割になると推定された。一方,スギ植栽木は中位の地位に相当する樹高成長を示したことにより,植栽密度2,500 本/haでは,雪上直立木が9年経過で1,000 本/ha(斜面積雪を安定させるのに必要な本数密度)に,12年経過では1,500 本/haに達すると推定された。以上のことから,本調査地のような条件においても,植栽密度が適切であれば木製杭による雪崩防止林の造成が可能であると考えられた。