目的: 産業保健活動総合支援事業において,産業保健総合支援センター(産保センター)と地域産業保健センター(地産保)が小規模事業場を支援しているが,その活動実態はあまり明らかとなっていない.本研究は,小規模事業場への産業保健サービスの充実化につなげるため,地産保の活動実態と地産保の活動に対する主観的評価を明らかにすることを目的とした. 対象と方法: 平成28年9月から平成29年1月に,全国の地産保344か所の地域運営主幹377名ならびにコーディネーター507名を対象に,郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った.地域運営主幹・コーディネーターの属性,地産保の体制と活動状況,地産保の活動に対する主観的評価等を尋ねた. 結果: 地域運営主幹290名(76.9%),コーディネーター413名(81.5%)から回答を得た.地域運営主幹のうち医師会産業保健担当理事が66.2%であった.コーディネーターの平均経験年数は5.7年,資格を有する者は44.6%であり,衛生管理者が最も多かった.コーディネーター以外のスタッフがいる地産保は22.0%であり,登録保健師の配置ありは29.8%であった.事業場が地産保に登録・利用するきっかけとして労働基準監督署の指導が最も多かった.地産保の活動に対する主観的評価では,地域運営主幹,コーディネーターのいずれも9割以上が活動できていると評価していた.コーディネーターから相談されると回答した地域運営主幹は相談されないと回答した者に比し( p <.001),産保センターからの相談・指示ありと回答した者は相談・指示なしと回答した者に比し( p =.006),かなり活動できていると評価していた.地区医師会が複数に比べ単独は( p =.014),コーディネーターの資格ありはなしに比し( p =.007),活動内容の情報提供を行っている者は行っていない者に比し( p =.011),事業場へのメール・ホームページでの情報提供を行っている者は行っていない者に比し( p <.001),健康相談カルテ等を使用しているコーディネーターは使用していない者に比し( p <.001),地域運営主幹への相談ありのコーディネーターはなしの者に比し( p =.028),かなり活動できていると評価していた.また活動に見合う登録産業医がいると回答したコーディネーターはいないと回答した者に比し( p =.032),活動内容の情報提供を行っている者は行っていない者に比し( p <.001),健康相談カルテ等を使用しているコーディネーターは使用していない者に比し( p =.006),資格ありの者が多かった. 考察と結論: 地産保の活動実態が明らかとなり,地産保によりスタッフの体制や地産保活動の展開方法が異なることが示唆された.コーディネーターのみで活動している者や資格を有しない者が多かったことから,産業保健に関する知識を有することができるよう研修を充実させることと実際の業務支援が必要と考える.地産保活動は概ね肯定的に捉えられていたが,地域運営主幹とコーディネーターの相談連絡の円滑化や広報活動の活発化,健康相談カルテ等のツールの活用が活動の活発化に影響すると示唆された.