グラフ理解は,ボトムアップ処理とトップダウン処理の両処理が相互に影響し合うことで行われる。グラフ理解におけるボトムアップ処理は,図的表象から主要な記号的情報が取り出される「抽出」の段階と,それらの記号的情報と長期記憶内にある宣言的知識とが照合される「解釈」の段階に分けられる。さらには,グラフ理解に基づいて「判断」を下すことが求められる場合がしばしばある。本研究では,「印象」や「態度」に基づくトップダウン処理が,これらの一連のボトムアップ処理の段階のどこに影響するのかという点について検討する。実験の結果,その場で一時的に形成される「印象」によるトップダウン処理は,グラフ理解における「抽出」と,それに続く「判断」の両方の段階に影響する一方,社会規範意識に基づき長い時間をかけて形成される「態度」によるトップダウン処理は,グラフ理解には影響せず,「判断」の段階のみに影響することが確認された。また,「態度」が「判断」に影響する場合,その「判断」はボトムアップ処理に依存することなく行われることが確認された。