他者の行為を観察して自らの行為を学習するには他者の目的を推定する能力が求められる.ある心理実験では,ヒトの18か月児が大人の行為を観察し,その未知なる目的を推論できることを示した.本研究では,この心理実験に着想をえて,どうすれば未完遂の行為の観察からその本来の目的や計画を推定できるかを数値実験で検討する.具体的には,異なる目的(課題)に最適化された2種類の単振子が一見よく似た軌道(動作)を生成するような実験設計を行い,どんな特徴量を用いれば軌道を生成した未知なる制御器(意図)を識別できるかを検討した.本研究の分析では,力学系の不変量「フラクタル次元」は,観察対象に関する事前知識をほとんど要さずとも,意図の識別に十分な情報をもつことを示した.