摘要:目的: 本研究は若年性認知症を有する従業員の就労継続に関する事業場の認識を明らかにすることを目的とした. 対象と方法: A県内の労働者50人以上の全事業場1,293施設に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は事業場の基本属性,事業場内での従業員が利用可能な制度,職場内の連携,若年性認知症に関する認識,若年性認知症を有する従業員の就労継続の可能性(以下:就労継続の可能性)とした.就労継続の可能性の高低と,基本属性,従業員が利用できる制度,職場内の連携,若年性認知症に関する認識と対応の関連を分析した. 結果: 357の事業場から回答があり,有効回答273を分析に用いた.就労継続の可能性が高いと回答した事業場は133施設(48.7%),若年性認知症について「知っている」と回答したのは135施設(49.5%)であった.若年性認知症を有する従業員に対する対応の検討,管理職もしくは従業員への研修,資料周知の実施,研修予定ありはいずれも10%に満たなかった.就労継続の可能性に関連する要因は,従業員数が「100人以上」( p =.015,100人未満に対するオッズ比2.02),治療中または雇用障害者の従業員が利用できる制度の有( p =.011,無に対するオッズ比2.22),産業保健スタッフとの連携対応の有( p =.004,無に対するオッズ比2.16)であった. 考察と結論: 事業場を対象として若年性認知症に関する研修や十分な情報提供を行う必要があることが示唆された.特に小規模事業場では,事業場が利用できる制度を活用できるような外部支援が必要であると考える.