摘要:クロマツは耐塩性が高いがマツ材線虫病抵抗性が低く,アカマツは耐塩性が低いがマツ材線虫病抵抗性が高い。マツ材線虫病抵抗性と耐塩性の両方が高い材料を作出するため,本研究では,クロマツ×アカマツ推定雑種由来の実生に着目した。まず,推定雑種2クローンについて, MIG-seq法で核DNAの遺伝的組成を調べた。次に,推定雑種由来の実生苗について,葉緑体DNAのPCR-RFLP法により花粉親を判別した。ついで,クロマツ,アカマツ,推定雑種の実生苗を用いて,切り枝および苗木を海水に浸漬し F v / F mを測定した。さらに,針葉中のナトリウム濃度を質量分析計で測定した。DNA分析の結果,推定雑種が両種の中間に分布したこと,それらの実生苗の花粉親は全てアカマツであったことから,これらはクロマツ×アカマツの雑種第一代にアカマツの花粉がかかる戻し交雑で生じたと示唆された。推定雑種由来の実生の F v / F mはアカマツよりも有意に高く,Na含有量はアカマツよりも低かった。推定雑種由来の実生苗は耐塩性を持ち,さらにマツ材線虫病抵抗性を示すことも確認されているため,海岸林再生の材料として利用できる可能性がある。.