第2次安倍内閣では、「日本再興戦略」という民間投資促進を通した成長戦略を推進してきたが、この中で「医療の国際展開」が国策として注目されており、現在様々な施策が展開されている。この一つとして、厚生労働省は、平成27年度より医療技術等国際展開推進事業(以下国際展開事業)を開始しており、日本の専門家の関係国への派遣と関係国からの研修生受け入れを実施し、官民連携を通じた医療の国際展開を推進している。国立研究開発法人国立国際医療研究センターは、現在国際展開事業の事務局機能を担っている。当報告は、国際展開事業が開始後4年を経過する中で蓄積した事業の成果をまとめ、官民連携を通じた医療の国際展開事業の中での当事業の位置づけについて考察する。平成27年度から平成30年度までの4年間で実施された119事業の報告書から、事業全体の運営状況、事業による国際展開における事業インパクト、事業による相手国における健康向上へのインパクトについて情報を抽出した。分析の結果、運営管理に関しては、多様性のある事業を扱いつつも、各事業の遂行率が良好である点から一定の評価が可能であった。国際展開における事業インパクトに関しては、事業で紹介された医療技術がガイドライン/国家政策に反映された例4例、調達につながった医療機器例17例と一定の成果をあげたことがうかがわれた。健康向上におけるインパクトでは、4年間で該当分野の研修を受講した保健医療従事者数と平成30年度事業の結果期待される裨益人口数は、それぞれ19,646人(119事業)と912,334人(29事業)で、相当数の対象国人口の当該保健医療サービスへのアクセス向上に国際展開事業は貢献できたと思われる。以上より、4年間の国際展開事業は一定の成果をあげたとして評価できると思われる。また、国内の類似事業あるいは世界の官民連携事業を鑑みても、医療技術や病院管理など医療に直接かかわる技術の移転を通して医療の国際展開を推進しているという点で当事業は特徴的であり、その経験は今後保健分野の開発支援と国際展開を効率的に進めていく上で貴重な知見となると思われる。しかし、年間30ほどある事業にはそれぞれには多様な活動が含まれており、その経験から得られる学びも様々である。今後、それぞれの事業を詳細に分析することで、その学びをまとめ報告し、将来の活動に生かしていきたい。