本稿では,2018年6月から2019年6月まで(一部2017年を含む)に発刊された,臨床心理学領域の論文を概観した。まず,初の国家資格者である「公認心理師」が誕生した年であるため,臨床心理学の各学派と職域で,心の健康についての共通認識を持つことが重要な課題であることを論じた。次に日本教育心理学会第61回総会の研究報告とシンポジウムについて述べ,続いて臨床心理学分野の主要5領域ごとに,7つの学会誌に掲載された65本の学術論文の内容と意義について論じた。選定にあたり,国民の心の健康の保持増進に役立つもの,社会的に周知する意義のあるものを基準とした。そして,臨床心理学の研究において,心の健康の理解と探索のためには,「獲得と受容」「個と集団の相互作用の健全化」「心身の安全と主体性の保障」の3つの観点が重要であることを述べた。