摘要:本研究では,中高齢期における感情の個人内変化を検討した。50歳から76歳までの個人を対象にした,2007年から開始された調査の6年間の縦断データ(第1波調査時点での分析対象者: N =3,107)を用いた。いずれの年齢でもポジティブ感情は低下した一方,ネガティブ感情の軌跡には年齢差が認められた。ネガティブ感情は,中年期には逆U字型の変化を示し,高齢期には安定した。さらに,ボトムアップ理論に従い,文脈要因(性別,教育歴,就労状況,婚姻状態,主観的健康)が感情の個人内変化における個人差を説明するか検討した。関連要因を統制しても,ポジティブ感情は低下した一方,中年期におけるネガティブ感情の変化は部分的に説明された。とりわけ中年期における感情の悪化は既存の知見と整合しなかった。感情の軌跡について,考えられるメカニズムを考察した。.