文章基本信息
- 标题:江戸時代人骨にみられた眉間部の病的陥凹
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- 作者:小片 丘彦 ; 山本 美代子
- 期刊名称:Anthropological Science
- 印刷版ISSN:0918-7960
- 电子版ISSN:1348-8570
- 出版年度:1987
- 卷号:95
- 期号:3
- 页码:381-390
- 出版社:The Anthropological Society of Nippon
- 摘要:鹿児島県大口市王城地区において1984年7月,江戸時代中期(18世紀初頭)の廃墓から5体の人骨が出土した.このうち熟年期の女性と思われる1体(王城1号)の頭蓋に,前頭部から鼻根部にわたる大きな病的陥凹が見いだされた.この部位以外の骨格には病的所見は認められない.陥凹は眉間を中心とした直径約50mmの箋界明瞭な椀状のくぼみで,深さは最深20mmに達する.上方は眼窩上縁より22mm上の前頭鱗まで,下方は、鼻根の下20mmくらい,側方は左右眼窩内に張り出し,ことに右では眼窩の内側上部1/4を占める.陥凹の辺縁は鋭く,とくに上半周に相当する前頭鱗の部位では本来の骨表面から盛り上がり,堤防状,一部は障壁状にそそり立っている.また,鼻部では左右鼻骨は見当たらず,左右上顎骨前頭突起が圧平された形に変形して存在する.陥凹の周壁および底に当たる部位の骨質は極めて薄く,板間層は存在しない.底の右上部に径10mmほどの菲薄化による穿孔があり,頭蓋腔と交通している.陥凹内の骨表面は全般的に平滑で,前頭洞中隔や骨梁などの構造は一切見られないが,陥凹の下半部には無数の微細孔を伴った極めて薄い新生骨が広がっている.これらの所見から,この陥凹は右前頭洞に発生した良性嚢胞様疾患が周囲の骨を極めて緩慢に圧迫破壊して拡大した結果生じたものと思われる.前頭洞の拡大を来す疾患として粘液嚢胞,皮様嚢胞,良性および悪性腫瘍,前頭洞気胞腫や前頭洞炎が挙げられるが,本例の場合,発生頻度の比較的高い前頭洞粘液嚢胞の可能性が最も強い.副鼻腔の粘液嚢胞は,副鼻腔と鼻腔との連絡孔が何らかの原因で閉塞されることにより,副鼻腔に粘液が貯溜して形成されるもので,解剖学的構造上前頭洞,飾骨洞に最も起こりやすい.嚢胞は徐々に拡大して周囲の骨を圧迫破壊する.そのため痛みや腫張を引き起こすが,前頭洞の場合,眼窩に進出して眼球突出,眼球転位,複視などを来すという.本例も嚢胞の内圧:充進につれて徐々に前頭洞が拡大し,長い経過の後,ついに洞の前壁にあたる眉間の骨壁を消失させるに至ったものと思われる.また,炎症の痕跡を示す薄い骨新生があり,頭蓋腔への穿孔も認められるところから,病変が頭蓋内腔の炎症にまで進展し,致命的となった可能性もあるものと考えられる.
- 关键词:Paleopathology; Frontal mucocele; Edo period