摘要:有限要素法(Finite Element Method)という応力解析の手法を導入し,現代人大腿骨の近位部への応用を試みた。この手法によって得られた主応力の方向と大腿骨のX線写真上で見られる海綿質の方向について,差の検定を行い,von MEYER の仮説(海綿質の流れは主応力方向と一致する)に対して,初めて定量的分析を加えた。有意差はない(P=0.93)という結果が得られたが,分散がやや大きく(σ=15.5°),この任意性がモデルの精密化によって克服されるのか,あるいは生体固有のものなのかという判断は以後の分析を待たねばならない。しかし,大腿骨近位端において,その一般的な形状は力学的に適応したものであろうどいうことが示され化石標本の機能的解釈への応用が期待される。