摘要:沖縄県那覇市大浜病院に来院,入院する悪性腫瘍を含む患者群及び健康者群,計600名より得られた血液試料につき,血清ハプトグロビン(Hp),トランスフェリン(Tf),赤血球酸性フォスファターゼ(AcP),アデノシンデアミナーゼ(ADA),エステラーゼD(EsD)およびフォスフォグルコムターゼ(PGM)等六種の遺伝的変異を検索した。各形質の遺伝子頻度を以下に示す。Hp; Hpl=0.2268 and Hp2=0.7732(n=485), Tf; Tfc=0.9876 and Tfd=0.0124(n=485, x2(1)=12.6551, P<O.001), AcP; Pa=0.2817 and Pb=0.7183(n=600,x2(1)=10. 9478,P<0.001), ADA; ADA1=0.9833 and ADA2=0.0167(n=600), EsD; EsD1=0.6531 and EsD2=0.3469(n=591),and PGM; PGM11=0.7158, PGM21=0.2683, PGM17=0.0142 and PGM15j=0.0017 (n=600).Tf変異とAcP多型の場合を除き,各形質において,表現型観察値と,ハーディ•ワインベルグ平衡を仮定して算出される期待値は良く一致した。Tfの場合のバーディ•ワインベルグ平衡よりの偏りは,稀なTfDDホモ接合型の偶然の出現によるものと解される。AcPの場合,この様な結果を招来した原因について若干の検討がなされた。EsD多型の日本人集団における分布に関する報告は未だ僅少であるが,沖縄県集団における本報告は,従来の報告に併せ,EsD変異は一方で世界的には顕著な地域差,民族差が示唆されつつも,本邦においては地理的変異に乏しいことが推測された。