文章基本信息
- 标题:西アジアネアンデルタール人とヨーロッパネアンデルタール人における上腕骨三角筋粗面の特徴
- 本地全文:下载
- 作者:遠藤 萬里
- 期刊名称:Anthropological Science
- 印刷版ISSN:0918-7960
- 电子版ISSN:1348-8570
- 出版年度:1971
- 卷号:79
- 期号:3
- 页码:249-258
- 出版社:The Anthropological Society of Nippon
- 摘要:Sinanthropusの上腕骨における三角筋粗面は狭く,稜を二本しか伴わないという特徴がWEIDENREICH (1941)とWOO & CHIA (1954)によって報告されている.しかし,これまではネアンデルタール期人類についてはこの粗面の観察が非常に少なかった.筆者(1970)は,すでに,イスラエル発見のAmud人(ネアンデルタール期)についてSinanthropusと同様な観察結果を報告したが,比較資料の不足のため,明瞭な結論を示しえなかった.この報告は,1970年に筆者がレバノン滞在中えた現代レバノン人(Mt.Carmel人Amud人の出土地点に近い)上腕骨の資料をもとに,上記の問題を一般のネアンデルタール人にひろげて検討したものである.〔材料〕現生人資料:晒上腕骨,西アジア•レバノン国現代人男性39側.ネアンデルタール人資料:上腕骨石膏模型-Düsseldorf(=Neanderthal)右,La Quina V左右,Spy I左右,Spy II左右(以上ヨーロツパ);Shanidar I左,Skhul IV左(以上西アジア)。上腕骨化石-Amud I左右(西アジア).〔観察〕まず粗面の幅についてみる.ヨーロッパの「クラシック」ネアンデルタール人の三角筋粗面は狭く,西アジアのネアンデルタール人の粗面は前者より広いことが直視的にも理解することができる(図1).後者はレバノン人のそれに近いようである.これらの粗面をモアレ法による0.5mm間隔等高線写真でみると更に明瞭にわかる(図2).すなわち,前者の狭い緩傾斜面と後者の広い緩傾斜面がそれぞれの粗面を示している.この特徴を量的に表現するため,上腕骨最大長の5/12分割点における三角筋粗面幅と骨体周径を計測する.前者の絶対値と両者の比についてみると,表1の如く上記の観察と一致し,さらに西アジアネアンデルタール人の粗面がレバノン人の粗面の狭い部類に入ることがわかる.上記の両変量について相関図を作り,現代レバノン人の回帰直線と粗面幅観測値の信頼限界線を描いてみる(図3).ヨーロッパネアンデルタール人の粗面幅は99%限界のはるか下に分布し,レバノン人と有意に異る。西アジアネアンデルタール人においては,Skhul IVの値は95%限界内に,他は95%線と99%線の間に入る。次に粗面上の稜についてみる.石膏模型での観察は正確とはいえないが,とにかくすべてのネアンデルタール人の粗面には第三の稜は認められない.一方現代レバノン人では第三稜の明瞭なものが71.8%,痕跡的なものを含めると92.3%に及んでいる.明瞭な第三稜についてのネアンデルタール人と現代レバノン人の出現頻度の有意の差は明らかである.〔議論と結論〕現代レバノン人上腕骨における上記の特徴はサピエンス一般に通じる傾向の特徴と考えられる.ここにおいて,Erectus期人類のSinanthropusにおける三角筋粗面の狭く,二稜性であるという特徴は,その後のNeanderthal期人類のヨーロッパの「クラシック」ネアンデルタールにも存在し,Sapiens期人類においては広く,三稜性の特徴に変っていることが推定される.西アジアネアンデルタール人の粗面は,これらの点で,ヨーロッバネアンデルタール人よりむしろSapiens期人類のそれに近づいていると考えられる.三角筋粗面の第三稜については,KOBAYASHI(1967)が日本人において30才以上で明瞭となる特徴であると述べているため,これらのネアンデルタール人の若いことを示している可能性もある.これまでヨーロッパネアンデルタール人では一般に三角筋粗面の発達は良いとされてきた.しかし上記の結果は反対に発達が悪いことを示すものと考えられ,さらに従来の報告にみられる鎖骨の細さや肩峰の狭さとともに三角筋の発達が悪いことを考えさせるものである.すなわち,Sinanthropusと同様にヨーロッパネアンデルタール人では三角筋の発達が弱く,現生人と異る.しかし西アジアネアンデルタール人の三角筋の発達は現生人のそれに近づいていると思われる.さらには,「クラシック」ネアンデルタール人の上腕の外転挙上能力は西アジアネアンデルタール人や現生人より劣ることが想像される.