摘要:1964年3月より1966年3月まで Elizabeth Sanders Home 混血児調査に5回に亘って参加し,眉上げ,口角引きの表情運動に伴う筋電図を直径5mm の銀盤電極による双極誘導で記録し,振巾を測定するとともに周波数分析を行った。両側運動中の筋電図振巾はN群(米黒人×日本人)あるいは W 群(米白人×日本人)を問わず大多数の被検者に於いて右側の筋よりのものの方が大きいことが認あられた。片側運動中,運動側と対側との筋電図振巾の比は右側運動の方が高い被検者の方が多かった。両側性の口角引きではN,W群とも右側の筋からの筋電図がより速波成分比率が高く,両側性眉上げではN群においては右側の筋の方がより速波成分比率が高く,W群に於いては相違を認め難かった。以上の傾向は日本人成人男子において認められた表情筋の随意運動の右側優位(近藤ら1966)が当該混血児に於いても存在することを示すものと考えられよう。筋電図速波成分の出現と Gamma 運動系の関連(KONDO 1964)に基き,表情筋運動の一側優位性の機序に就いて若干の考察を加えた。