本研究は,女性の発達の一過程として既婚女性の依存性の様相を解明し,高橋(1968a, 1968b, 1970)の調査した中学生から大学生までの結果との比較により,青年期以降の依存性の発達的変容を検討した。質問票及び分析法は全て高橋に準じた。被験者は幼児を持つ母親213名であった。結果は以下のようにまとめられる。 1) 既婚女性では夫を焦点とする単一焦点型が圧倒的に多く,高橋の指摘する「発達の方向としてのF型化傾向」は既婚女性においても確認された。 2) 中学生から大学生にかけての愛情の対象型の増加傾向は,既婚女性における大多数の夫への依存で完結される。 3) 既婚女性にとって母親は夫に次いで重要な依存の対象ではあるが,単一の焦点としてではなく,心の支えとしての機能を果たす。 4) 依存要求の強度は,高橋の中学生から大学生までの結果と比べて,既婚女性の方が弱いということはなかった。 5) 既婚女性では子どもを生きがいとする者が多く,依存行動のパタンの違いにかかわらず見られる傾向であった。 6) 既婚女性における依存構造のパタンは就業意識とは独立であった。