従来,対象の永続性課題解決の失敗は,対象概念や認知能力,あるいは運動技能の未発達によるとの異なる解釈がなされている。本研究は,対象の永続性課題解決過程が,カバーを取ることとカバーの下の対象を手に入れるという異なる2つの目標志向性を含むことと,たとえ諸能力が発達していても,課題解決への動機づけが低い場合には,対象の永続性課題解決に失敗することを予想した。そこで,標準的な布カバーと,乳児の注意を喚起しやすい赤色の紙カバーの2種類の対象の永続性課題を,生後7.4か月児に与えた。その結果,課題解決の正反応数および反応速度においては,課題間に有意差がなかった。カバーに対する乳児の態度を観秦したところ,rカバーを取るだけで,課題解決には失敗するが,カバーを探索している行為は,布カバーより紙カバーで多く,逆に,課題に興味を示さない」行為は,紙カバーより布カバーの場合に多く見られることが実証された。