本研究の目的は,Atkinsonの達成動機づけ理論における,総合的な動機づけの効果,および,遂行に対する最適の動機づけ水準を実験的に検証することにあった。被験者は,245人の男女中学生で,遂行の測度としてはアナグラム課題が用いられた。 総合的な動機づけ水準を設定するため,各被験者の達成動機強度が測定され(TAT, TASCによる),状況的な要因としては,2種類の教示(達成志向・リラックス)が用意され,課題困難度も2水準とされた。 結果は,Atkinson理論式の各項が単独に遂行を規定することはなかった。それに対して,各項を同時に考慮した分析の結果では,総合的な動機づけによる遂行の変化が観察された。この点でAtkinsonのモデルの有効性が確認されたといえる。 しかし,最適の動機づけ水準ということに関連した課題困難度の効果ははっきりしなかった。男子では課題困難度にかかわらず,単調増加に近い結果が得られた。一方女子では,「過剰動機づけ」の現象がみられたが,その傾向はむしろ易しい課題の方で大であった。