この研究は,沖縄の児童に関する教育指導上の基礎として,関西児童との間に,知能テスト結果の比較分析をしたものである。このため,沖縄および関西それぞれにおいて,上流住宅地,都会の下町,衛星的中流都市,純農村という4種の社会層から,小学校5年生各1個学級が選ばれた。これらの被検者に対し,現行の知能テストの中で,A式およびB式を代表する4種のテストが,1ヵ月おきに4固実施された。その結果・各得点の平均値の比較,A得点よりB得点をひいた差点による比較,下位検査の相互相関による因子分析という3側面からの考察が行なわれ,次のことが認められた。1.全般的にいって,沖縄児童の知能テスト結果は,関西児童に比べると,偏差値にして平均約10点の差が認められる。2.内容的に分析してみると、沖縄児童は言語式テストにおいて著しく不利であり,これが両地域の全般的な差の主要因である。3.A式からB式を引いた差点による分散分析の結果では,沖縄児童はB式において有利であるに対し,関西児童はA武において有利であることが明瞭に示される。また沖縄の関西に対するこの関係は,農村の都会に対する、関係,および男子の女子に対する関係に類似している。すなわち,沖縄児童は一般に.「農村・男子」的構造であるに対し,関西児童は一般に「都会・女子」的構造である。4.沖縄においては,都会児童と農村児童との差は関西におけるそれよりも少なく,むしろ男子と女子との間の差の方が顕著である。これに対し関西では,男女間の差はほとんど認められずに都会と農村との差が顕著である。5.因子分析の結果では,一般因子(G)・言語因子(Y)空間知覚的因子(P)までの全般的な構造においては,両地域にはとんど差はない。しかし各主要因子への個々のテストの負荷状況には,それぞれ特徴が見られる。6.一般的にいって,沖縄児童では一般因子および言語因子に対して,言語的テストが関西児童よりも多く負荷している。すなわち沖縄児童の知的活動では,言語理解教育心理学研究や言語表現の力が,関西よりも重要な役割を占めているのである。7.言語因子および空間知覚因子の下にそれぞれ分析された下位因子は,内容的には明確な解釈を与えることは困難であるが,各地域に固有の要素を示すようである。そして全般的に見て,言語教育的検査と非言語的検査とが,それぞれの下位因子に対して,沖縄と関西とでは逆の模様に負荷する傾向が見られる。
The purpose of this study is to analyse the intelligence test results of Okinawa and Kansai pupils in order to contribute to the improvement of educational achievement in Okinawa, and also to acquire a better understanding of the intellectual activities in the remote rural districts in Japan. Four typical areas, i. e. highest-class residential section, down town, of a big city, suburban mddle-class town, and purely agricultural community, were chosen for this purpose both in Okinawa and in Kansai, and about 340 fifth-grade pupils were used as the subjects. Four group-intelligence tests, two of which belong to A-type while the others to B, were administered to the subjects over a period of three months with an inter-test interval of one month. Analysis and comparisons of the test scores led to the following conclusions: